「親知らずって抜いたほうがいいですか?」 歯科の仕事をしているというとよく尋ねられます。
普通の歯ですが、抜くのが当たり前みたいになっている歯というのも気の毒なものです。
この親知らず、正式には第3大臼歯という名前があります。 永久歯の中で一番最後に生えてくる歯で、現代人の顎が小さく、細くなったため、スペース不足でまっすぐ出てこれないことが多く、このため汚れがたまりやすくなって、様々なトラブルを起こします。
特に多いのがハグキの炎症です。 同じハグキでも、親知らずの周りのハグキは、少し様子が違います。ハグキから出きれていない親知らずは、歯ブラシでのお掃除が難しくなっていて、ハグキが炎症を起こしやすいものです。
中途半端にハグキが被っているということで、ハグキの下に歯垢が残ってしまうことになるのです。親知らずの周りのハグキが炎症を起こす事を智歯周囲炎といいます。
智歯周囲炎の症状
親知らずの周囲が腫れる
奥歯の周りのハグキを押さえるとなんだか変な感じがしたり、頬の外側を押さえると痛い感じがしたりします。
口が開きにくくなる
今まで、指が3本くらい入っていたのに、入って1本、もしくはほとんど開かないようになったりします。
物を飲み込みにくくなる
奥歯と喉は大変近いので、のどまで炎症が行ってしまうことはよくあります。その結果喉が腫れて、飲み込む時に痛い感じがします。
治療
よく、痛いので今日抜いて下さい、と言う方がおられます。 痛くて、つらいので早くというお気持ちはよくわかりますが、腫れや痛みが強い時は極力抜かないようにしています。
炎症が強い時は、麻酔も効きにくく、効いている時間も短いので、抜歯がスムーズに進みません。 また術中、術後の痛みも出やすく、出血も止まりにくい傾向があります。
痛い時は、まず炎症を押さえるために、抗生剤を服用してもらいます。痛みが強い場合は鎮痛剤も使います。 また歯垢が残ったままになっていると治るのに時間がかかるので、細い歯ブラシなど専用の器具できれいにします。
痛みが治まったところで、抜歯を行います。しかしながら、痛みが治まると、抜こうと思っていたかたも、決心が鈍ったりします。
私は、「今回は、これで様子を見ましょう。ただ、短期間の内に何度も痛むようでしたら抜く事にしましょう」という話をしています。
親知らずを抜かずにずっとお口の中にある人もいます。親知らずとはいえ、れっきとした歯ですので、お口の中にあってはいけないということではありません。 症状に応じて処置方針を決めて行きましょう。